緑の調律日誌

希少な絶滅危惧種、タカネキンポウゲ、クモマキンポウゲ、公開中です!

2021/06/08

白馬五竜高山植物園では、あらゆる高山植物を植栽、展示していますが、

中でも特に希少な高山植物が咲いています!

植物園のアルプス平広場に設置してある絶滅危惧種コーナー。

その中でも、(公社)日本植物園協会の保全事業において、公式な許可のもと種子を採取し、タカネキンポウゲ、クモマキンポウゲ、ツクモグサ、ウルップソウなどの絶滅危惧種を栽培していますが、中でもタカネキンポウゲ、クモマキンポウゲが花を咲かせています!

タカネキンポウゲ。絶滅危惧種IB類。白馬岳周辺のみで見られる種類です。

希少な種類なので、どこに生育しているかなどの情報を明かすことは出来ませんが、登山道沿いからは見ることが出来ません。

2019年夏に白馬岳周辺において現地調査を行い、現地に影響の少ない範囲で種子を採取し、種子の一部は環境省新宿御苑で種子の冷凍保管を行い、植物標本については国立科学博物館に収め、種子の一部を使用し、生体保存をする目的で白馬五竜高山植物園で試験的に栽培を行っています。

植物を保全するために、現地の環境を守ることを「生息域内保全」、植物園等で守ることを「生息域外保全」と言います。
こちらは、「生息域外保全」の活動となります。

2019年夏に採取した種子を栽培したところ、わずか一年で一部の個体が開花に至るようになりました。

そして、植物園の絶滅危惧種コーナーに植栽したところ、5月中旬の雪解けと共に多くの個体が見事な開花を見せてくれたのは嬉しい限りです。

キンポウゲの類では、ミヤマキンポウゲなどが良く知られ登山道で見ることが出来ますが、

このタカネキンポウゲは、背が低く、光沢のある厚い葉が特徴的ですね。

現状では、これくらいの数を植栽、展示してあります。

植物園のバックヤードには、まだ多くの苗が育っています。

それらも含めて、6月下旬頃まで開花が続くものと思われます。

クモマキンポウゲ。絶滅危惧IA類。こちらも白馬岳周辺のみで見られる種類です。

タカネキポウゲと同じく、登山道沿いからは見ることが出来ません。

こちらは、タカネキンポウゲと比べ、非常に小さい姿をしています。

2019年夏の白馬岳現地調査で種子を採取し栽培をしたところ、わずか9ヶ月で開花に至ることが出来ました。

栽培した開花個体から得られた種子からも、発芽が確認されています。

貴重な植物の栽培を、永きに渡り続けていけるよう努めさせていただきたいと思います。

これらの希少な高山植物は、アルプス平広場の絶滅危惧種コーナーにて見ることが出来ます。

2021年6月5、6、12、13日と早期開園をしていますが、その際の学芸員ガイドでは、これらの植物についても説明させていただきました。

当植物園の顧問でもあり、信州大学名誉教授である土田勝義氏。

開花を見ていただき、現地の情報や生育環境を捉えながら、今後も保全活動を続けていきます。

2019年に白馬五竜高山植物園を会場として行った、(公社)日本植物園協会主催の講演会の様子です。

このような活動を通して、白馬五竜高山植物園の希少な植物を保全する取り組みを、広く知っていただく啓発活動も行っています。

当植物園顧問の森和男氏(東アジア野生植物研究会主宰)。

古今東西の高山植物栽培に深く造詣があり、数多くの植物園の指導も行っています。

高山植物の宝庫である長野県には高山植物を育て、守り、一般にも理解してもらうための県立植物園はありません。

我々、白馬五竜高山植物園は民間のスキー場企業ではありますが、高山植物の育成に向いた環境を活用し、高山植物の保護拠点園としての役割を深めていきたいと思っています。

(公社)日本植物園協会の絶滅危惧種の拠点園である植物園、環境省や県の研究者などを招いての絶滅危惧種保全の会議も行いました。

広く正しく、保全する活動を続けていきたいところです。

下記は、講演会時に使用したスライドの一部になります。

今後も白馬五竜高山植物園の活動を見守っていただければ幸いです。

希少な植物を植物園で見ていただき、理解が深まることから、保全活動の一助となれば嬉しい限りです。