緑の調律日誌

【十年】白馬岳登山

2012/07/26

18歳、信州大学に来て、信州暦も十年。

毎年1回以上登っている白馬岳も、今年で十年。

ところで、自分にとって登山は「趣味」と言うには、ちょっと違う…?

日常に無い植物や景色を見るための手段。

(日常的に高山植物見る仕事ですが!違う雰囲気にて)

写真撮影の練習かつ実践。

仕事、知識、経験の向上、園内の植栽の参考とすべく。

学生の時に調査していた植生復元箇所の経年変化を視ること。

・・・、まあそれでも、毎年のように違う山にチャレンジして、登山そのものを楽しむようにもなっているので、そろそろ登山を「趣味」に格上げしても良いもんだろうか。。。

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2012年7月24日(火)白馬岳登山 日帰り

白馬山麓から見る白馬岳方面、天気は五分五分。

ハリブキ。

最初に載せる植物にしては何かマイナーな…。

この植物、幹も葉もトゲだらけ。それが大好きですが。

オオレイジンソウ。

白いトリカブトの仲間。撮影には良い時期でした!

モミジカラマツ。

テングチョウ…?いや、イカリモンガでした。

蛾…?チョウとガの境目が良くわからなくなる昆虫です。

登山道の途中にあるノウゴウイチゴ。

植物園にあるものは、こっそり堂々と食べているのですが、

残念ながらまだ熟していませんでした。

!!国立公園内の採集および採食はNGですよ!

熟していても、見るだけのつもりですから!

さて、白馬尻に到着。

ノノノノノノノノノノノノノノノ

・・・何だろう、違和感が。

これはひどい。

そう、この場所にある有名なキヌガサソウの群落、

すべて強風に煽られたようになっていた!!!!

台風に煽られた傘のような、キヌ「傘」ソウだけに。

白馬尻の山小屋の方に聞いてみた。

「朝来た荷上げのヘリのせいだね」

なんということでしょう。

全国243万5640人(推定)のキヌガサソウ大好き倶楽部の皆様、心底嘆いているに違いない・・・。

※このキヌガサソウの結末は本記事巻末に掲載

けれど、風の影響を受けていないキヌガサソウも奥にはたくさんありました。

白馬尻から向こうを見ていると、オレンジ色の花が。

ズームを利かせて撮影すると、コオニユリのようです。

あの岩に登ればコオニユリの楽園があるものか・・・。

大雪渓に到着。

登山シーズンだけあって、平日でも混んでいます!

ここで雪渓を登るためのアイゼン(鉄爪)を装着。

十数回に及ぶ白馬岳登山、常に使用している道具。

松本の佐山スポーツで数百円で買って、十年目。

包んでいる新聞もコンビニ袋も十年変えていないずさんな管理ながら頼もしく活躍してくれています。

大雪渓を登ると探してしまう花。

この、オオサクラソウ。

雪を外れて崖に登ることは出来ないので、ズームを利かせて撮影。

大雪渓よりも手前で間近で撮った写真。

種が流れてきたのか、それなりに数がありました。

場所は・・・ないしょで。

大雪渓を登りきると良く出てくるユリ、クルマユリ。

開花状況は、咲き始め。

あと数日遅ければ、花数も状態も最高だったろうに!

ランの仲間のテガタチドリ。

草むらからいくつも顔を出しています。

今年は小雪渓もだいぶ雪が残っていました。

ミヤマタンポポ。

高山のタンポポは何故か、気品があるように感じるような。

ミヤマクワガタ。

名前と色と雰囲気と、好きな高山植物の一つです。

低地で育てると、大きくなりすぎて高山植物らしさを失う種類でもありますが・・・。

毎年あるオトギリソウ。今年も変わらず斑入りでした。

雪が溶けたばかりのところでは、ウルップソウも花が見ごろの時期でした。

ハクサンイチゲ。

何というか、この花を見ると、高山に登ったのを凄く感じるものです。

崖に咲くシコタンソウ。

いかにも高山植物テイスト溢れて、良し!

ミヤマオダマキ。

栽培すると良く増えるものですが、意外と野生では少ないもの。

山頂付近は濃いガスでした。残念。

コマクサも綺麗な感じに咲いていました。

白馬岳はどちらかというとコマクサが少ないものですが、

大群生する場所と比べて、つまりコマクサの生育に本来は不適なところがあるのか・・・?

などと考えるのも、植物学的な面白さでしょうか。

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このあたりは学生のころに植生復元の調査をしていた場所。

当時のようにロープを越えて調査することはしていませんが、

毎年、歩道から見える範囲の写真を撮っています。

ところで、何となく撮っていた写真の中に一昨年と全く同じ場所を撮影しているものがありました。

写真上が2012年7月24日。

写真下が2010年7月28日。

小石の形も同じです。

けれど、明らかにウルップソウの葉が大きくなっている!

一枚だった葉が二枚になっていたりと。

「二年でこれだけ大きくなった」、

「二年でこれしか大きくなっていない」、どうとるべきか。

経年変化を毎年観るのは非常に有効なもの。

来年もこの場所をしっかりと撮るべし。

今回は、休日なのですが・・・、マジメな社員であるもので、パンフレットを500部ほど山に荷上げしました。くそおもい。

山頂に二つある山小屋、それぞれに置かせていただきました。

ありがとうございます。

早速手に取っていたお客様、

「もうすぐ、俺ら登れなくなるだろうから、ちょうどいいや(笑」

などと言ってくださいました。いやいや、まだまだ登山も楽しみましょうよ!

道中、植物を説明したりしたおじちゃん、おばちゃん、山ガールなお姉さんたち、

ついでに植物園の紹介もしておきましたが、皆さん興味しんしん。

山小屋の夕食食べながら、話題にしてくれたに違いない!・・・

植物園の営業活動は、山でこそすべきなのかもしれない・・・。

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十年目の登山。今回は偶然にも多くの方に会うことが出来ました。

会った順番に・・・。

白馬の植物図鑑など多く出されている、藤井猛さん。

グリーンパトロールの学生は、自分の親しい後輩の教え子だったという。

声をかけてくれた白馬東急の社員の方。一緒に登らせてもらいました。

信州大学で高山植物の研究をされている方。既に下山中、プロだなあ。

山岳フォトグラファーの、菊池哲男さん。雑誌取材の途中でした。

学生時代毎年お世話になった村営頂上宿舎の菊池支配人、今年も握手で迎えてくれました。

菊池哲男さんとは何度も白馬山麓でお会いしていますが、偶然山岳地域で出会ったもので、植物のことや撮影のヒントなど聞きながら登ることが出来ました。

うん、それにしても良い登山だった。

頂上宿舎から猿倉まで、写真撮影は控え下山に専念。

駐車場から見る白馬岳。

二時間前まであそこに居たのかと思うと不思議な気分になるもの。

来年も・・・、いや、秋頃にもう一回くらい登るべきかな。

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昨年の白馬登山ブログ記事

白馬岳登山

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全国243万5640人(推定)のキヌガサソウ大好き倶楽部の皆様、

朗報です!

下山してみると、キヌガサソウの8割は元に戻っていました!!

雨降って水吸えば、また元に戻ることでしょう!

植物ってすげー。